多動性生涯

読点と改行を混同しながら書いていますが、頭が悪いのとは関係ありません

新型SYSTEMSIX(仮)について思うこと

SYSTEMSIXの名称がUCIの認可リストに新規に追加されているのが発覚し、一部のキャノンデール・フリークたちの間でまことしやかにニューモデルの噂が囁かれたのは、私の記憶が正しければ昨年末のことだ。

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SYSTEMSIXというのは過去に存在したキャノンデールロードバイクのモデル名だ。それは2006年に発表された正真正銘のレーシングバイクで、アルミとカーボンのハイブリッドフレーム、いわゆるアルカーボンのバイクだが、当時の標準的なアルカーボンフレームがリア三角をカーボンにして衝撃吸収性を狙っていたのに対し、トップチューブ、ダウンチューブ、シートチューブをカーボンとし、リア三角をアルミとする奇抜な手法を採っていた。ちなみにリア三角はCAAD9と同一だ。これはSYSTEMSIXの先代モデルのSIX13(ちなみにこれのリア三角は旧CAAD8と同一である)から引き継がれた構造だが、このような手法が採られたのはキャノンデールがアルミの加工技術に絶大な自信を持っていたからに他ならないだろう。なにせ彼らは、自社のバイクを自らアルミフレームの神と名乗るようなメーカーなのだから。

さて、その新型SYSTEMSIXが再び俎上に載ったのは、2月の末、UCIワールドツアーのひとつであるアブダビ・ツアーの第二ステージ直後のことだ。チーム・キャノンデール・EFドラパックは、突如ニューマシンをレースの現場に投入してきた。もちろん新型SYSTEMSIXとなるバイクだろう。大方の予想を裏切らず、エアロロードとして世に産声をあげたそのバイクがこれだ。


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カムテール形状でボトル装着時の空力をも意識したダウンチューブ、徹底的なケーブル類の内装、コンパクトなリア三角、リアタイヤに沿って湾曲したシートチューブ、スルーアクスルのディスクブレーキ、更にヴィジョン・メトロン5Dステム一体型ハンドルがアッセンブルされるなど、一瞥しただけでも最新のエアロロードの教科書通りといったパッケージングが見て取れる。目を引くのはせいぜい、トップチューブ上部からケーブルが内装されている点と、キャノンデールお家芸のBB30を採用している点くらいのものだ。

 

キャノンデールは各社が続々とエアロロードの開発を進める中、これまでその類のロードバイクを頑なに作ってこなかった。2015年に現行SUPERSIX EVOが発表される際、エアロロード化との噂も流れたが、彼らが世に送り出したのは従来通りの形状で更に各所の性能を突き詰めた究極のオールラウンダーを目指したようなモデルだった。その時、プロダクト・マーケティング・ディレクターのマレー・ウォッシュバーンは次のようなコメントを残している。

スプリントだけしか考えないのであれば高剛性を、平坦をロケットのように飛ばしたいだけであればエアロを求めるでしょう。でもキャノンデールとしては、「True Road Bike(=本当のロードバイク)」こそが人々のニーズであると考えています。今回掲げた「A BALANCE OF POWER」の意味はそこにこそあるのです。

 かくも言う彼らがかつての名車SYSTEMSIXの名前を引っさげてエアロロードバイクを出すのだから、どんなぶっ飛んだバイクなのかと期待していたが、蓋を開けてみるとそれは、乱雑に言ってしまえばトレンドに乗っただけのつまらないエアロロードだった。少なくとも(口の悪い)私にはそう感じられた。

これまでのキャノンデールロードバイクには、どれも個性的で、それが魅力を放っていたように思える。CAAD12ではキャノンデール自ら「アルミフレームの神」と称し、他社の軟派なカーボンロードを叩き潰しにかかった。他社がエアロロードでレースを走る中、オーソドックスなルックスのSUPERSIX EVOがそれに食らいついている姿は陳腐な言葉を使えば「エモい」というやつだったし、昨年登場した新型Synapseはエンデュランスロードながらレーシングモデルに匹敵する剛性を得て気を吐いた。

それらが持っているある種の強烈な請求力のようなものを、私は現時点では新型SYSTEMSIXから感じ取ることができなかった。数あるエアロロードの中でのワンオブゼムにしか感じられないし、もっと言えばあのバイクにキャノンデールのロゴが付いていることに違和感すら感じた。もちろんこれが私の偏見に満ちた個人的な見解だということはお断りしておく。

 

僕はキャノンデールロードバイクに乗っているし、それに比較的このメーカーが好きだ。だからこその期待だったし、このような感想になったのだと思う。

次にキャノンデールからニューモデルが出るとすれば、おそらく新型SUPERSIX EVO、もしくはCAAD13となるであろうCAAD12の後継モデルだ。SUPERSIXは言わずと知れたフラッグシップだし、CAAD12の後継がCAAD13となるならばそれは特別なモデルとなる可能性が高い。なぜなら13というのはアルミの原子番号であり、キャノンデールというメーカーはそういうことを結構重んじるところがあるからだ。

いずれにせよ、次のニューモデルには期待したい。

 

ロードキャリパーブレーキの引き量互換の話

以前著した記事【http://sov.hatenablog.jp/entry/2017/09/06/181804

において引き量の記述が少なかったので、元記事に補足でもしようかと思ったのですが、機構と引き量の相関なんかが思いの外ややこしかったので、新しい記事として書いてしまうことにしました

まず抑えておきたいのはSLR-EV、NewスーパーSLR、スーパーSLRってのは、引き量じゃあなくて機構の名前ということです 古いやつだと無印SLRとかもありますが割愛

引き量にはNewスーパーSLR(NewスーパーSLR互換)、スーパーSLR(スーパーSLR互換)があります

ですが、これはおそらくブレーキの引き量自体についてシマノ側が特に定義名を設けていないので、便宜上第三者が名付けたものらしく、そのせいでややこしいことになってます

詳しく見ていきましょう ちなみに当然ですが、同型式のブレーキとSTIの引き量は同一です

まず、SLR-EV(機構名)を採用しているブレーキ(BR-6800、BR-9000など主に11s世代)の引き量は、NewスーパーSLR互換です

で、NewスーパーSLR(機構名)を採用しているブレーキ(BR-6700、BR-7900、BR-4700など)の引き量も、NewスーパーSLR互換です

つまり引き量がNewスーパーSLR互換のSTIで引くブレーキを決める時に、SLR-EVかNewスーパーSLR(機構名)はどっちでもいいわけですね

で、スーパーSLR(機構名)を採用しているブレーキ(BR-7800、BR-6600など)の引き量はスーパーSLR互換です

で、NewスーパーSLR互換とスーパーSLR互換をごちゃまぜにして使う時に互換性の問題が発生します

実線がA互換(本来の性能を100%発揮できる)で、点線がB互換(使えるが本来の性能を100%は発揮できない)です

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噛み砕いて説明します 上半分のボックス2群の引き量がNewスーパーSLR互換、下半分がスーパーSLR互換です

NewスーパーSLR互換のSTIは引き量が多く(=同一ストロークで引いた時に引く力は弱い)、NewスーパーSLR互換のブレーキは弱い力でも強いストッピングパワーが発生します

んで、NewスーパーSLR互換と比較してスーパーSLR互換のSTIは引き量が小さく(=同一ストロークで引いた時に引く力が強い)、スーパーSLR互換のブレーキは弱い力では発生するストッピングパワーは弱い、と

つまり、スーパーSLR互換のSTIとNewスーパーSLR互換のブレーキの組み合わせが公式で禁止されているのは、少しのストロークの引きで強いストッピングパワーが発生されてしまいコントロール性が悪く危険だから、というわけです

NewスーパーSLR互換のSTIとスーパーSLR互換のブレーキがB互換なのは、たくさん引かないとなかなか止まらないからですね

ちなみに、カンパやスラムのエルゴ/ダブルタップとブレーキはスーパーSLR互換です

一般的なシマニョーロ(エルゴのみカンパ)っていうのは本来禁止されてる危険な組み合わせなわけですね まあメーカーミックスちゃんぽんの時点でそんなもん当たり前と言っては当たり前ですが

ブレーキは大事です 死なないように自転車に乗りましょう